久しぶりのブログ更新となります。
今回は中小企業のM&Aについてです。
経営者のみなさんは、M&Aというとどんなイメージをもっているでしょうか?
「買い占め」「乗っ取り」「ハゲタカファンド」…昔のイメージはこんなもんでしょうかね。
もくじ
1.M&A今昔
2.M&Aとは?
3.いつやるの?
4.スモールM&A5つのメリット
5.まとめ
■1.M&A今昔 〜ドラマ「ハゲタカ」とは違う世界〜
NHKのドラマ「ハゲタカ」が話題になったのは2007年、なんとリーマンショックの1年前。それ以前には企業買収に関連して、ライブドア事件や村上ファンド事件なんていうのもありました。
これらのドラマや大事件は上場株式の世界の話で、M&Aなんて我々中小企業のオヤジには関係ない、遠い世界の話…なんて思っちゃいますよね?
上場もしていない中小企業でM&Aに関係するのは、せいぜいIPOを目指すベンチャーぐらいのもの…と考えていたら大間違いです、社長!
株式公開していない町工場から、さらには店舗を営む個人事業主まで、意外とM&Aに関係する事例はたくさんあるんです。
■2.M&Aとは? 〜事業承継のひとつの選択肢〜
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略です。Mergersは合併、Acquisitionsは買収、の意味で、文字通り企業の合併と買収のことです。合併も含まれるのですね。
先のライブドア事件や村上ファンド事件からドラマ「ハゲタカ」まで、公開株式の取得にまつわるM&Aですが、公開株式でなくても会社が合併・買収されることはありますよね。会社の所有者は株主(オーナー)ですから、オーナーから株式を買い取って(株式譲渡)会社の所有権が移転するとM&Aの完了です。個人事業主の場合は、営業権の売却(事業譲渡)などがM&Aにあたります。
例えば「社長が急逝した」「息子に社長職を譲って引退した」などの場合も通例、株式の移転(相続)が行われますが、このような場合はM&Aに含めないのが一般的なようです。
中小企業のM&Aの事例について詳しくは、経済産業省が策定した「中小M&Aガイドライン」がとても参考になります。本ガイドラインでは「…基本的に社外の第三者による事業の引継ぎを念頭に置いており…」との一文があります。先の社長の家族や親戚への株式の相続(親族内承継)や、会社の役員や従業員の引き継ぎ(従業員承継)は「中小M&A」には含めず、ガイドラインでは「第三者承継」を対象としています。
「中小M&Aガイドライン」を策定しました(経産省)
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001.html
本コラムでもガイドラインにならって、「第三者承継」による事業の引き継ぎ、かつ中小企業や個人事業主といった比較的小規模の事業者のM&A(私たちはスモールM&Aといってます)を対象としてM&Aの解説をします。
■3.いつやるの? 〜「廃業」?その前に!〜
例えば、ベンチャー企業の出口戦略として「IPOは無理でも創業者利益を獲得して、新しくやりたいことの軍資金にする」、あるいは儲かる事業に専念したい企業が「いらん事業は売っぱらって成長事業の原資にする」などのタイミングでM&Aが活用されています。
一方で、ちょっとネガティブな感じになりますが、よくあるのが「事業を続けられなくなった」ときのM&Aです。具体的には「経営者の高齢化」「事業意欲がなくなった」さらには「資金繰りの悪化でこのままでは資金が持たない…」なんていうときのM&Aです。
そのような悩みはありませんか?「廃業」が頭にちらついた社長さんはぜひ読み進めてください。
■4.スモールM&A5つのメリット
M&Aには「売り手」と「買い手」が存在します(経産省のガイドラインでは「譲り渡し側」「譲り受け側」と定義しています)。以下に本コラムの主人公である社長さん、すなわち「売り手」側のメリットについてご紹介いたします。
①廃業せずにすむ
株式(または事業)を譲渡することで、仕事と組織を継続することができます。会社や事業は社長の手から離れてしまうかもしれません。しかし社長が育てた事業を誰かが引き継いでくれるのなら、それは一番のメリットだと思いませんか?
また事業の承継によって従業員の雇用を守るだけではなく、廃業費用を回避することができます。特に親族承継・従業員承継が不可能な場合、廃業に迫られ、第三者承継によるM&Aで急場を乗り切った例は「中小M&Aガイドライン参考資料」でたくさん紹介されています。
(参考資料1)中小 M&A の主な手法と特徴(経産省)
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-3.pdf
②個人保証外し
中小企業の社長さんは、個人保証をして金融機関から借り入れを行っていることが多いですよね?会社を売却するということは、資産をまるまる譲渡するということです。したがって負債もいっしょに譲渡されます。結果、個人保証から外れます。
③大金が手に入る
これは「株主(オーナー)=社長」の場合だけではなく、社長さん以外の株主である奥さんやご子息・お嬢様、ご兄弟姉妹、叔父叔母、従業員などなど、会社の売却によって利益を享受できる株主はたくさんいます。会社の売却は金銭によって会社が譲り渡されるわけですから、その対価として株主は株式譲渡(売却)によって大金を得られるということになりますよね。
④従業員との良好な関係の維持
廃業費用の心配以外に、社長さんがもっとも気にされるのが従業員の雇用です。会社売却によって、個人保証を外したり譲渡金を獲得できるなど、ご自身にとってのメリットは大きいですが、売却によって従業員から恨まれる…なんていうことは避けたいものです。M&Aの際は「従業員雇用の維持」を条件にすることもできます。「廃業」を選択した場合は確実に雇用がなくなりますので、従業員を第一に考える社長さんがスモールM&Aに取り組む理由は大きいと思います。
⑤負担から開放される
最後に「心労」からの開放です。ここまでの①〜④のメリットを総括すると、この一言につきます。これに年齢は関係ありません。ベンチャーだろうが老舗企業だろうが、経営者の重圧からの開放は、一線から引退したものの特典です。水戸の御老公とまでは言わないまでも「経営を誰かに引き継ぐ」ことによる精神的なメリットは、いうまでもありません。
■まとめ 〜スモールM&Aの注意点〜
ここまでスモールM&Aのメリットをご紹介させていただきました。しかし「売れる会社」と「売れない会社」は厳然と存在します。負債も含め「プラマイゼロ」で会社を売却できればまだしも、実質債務超過でM&A不成立というケースも多々あります。
しかしそのような事業の状況でも、買い手を見つけることは可能です。
そのためには会社や事業の価値を上げる、M&A前の「磨き上げ」が重要です。赤字を垂れ流すような会社は誰も評価してくれません。一方で、財務諸表に現れない企業価値の発掘、赤字から黒字への転換など、廃業前にできることは多々あります。
社長さん、ご自身の会社の「いいところ」を今一度考えてみてください。債務超過でも経常赤字でも買い手が魅力的な会社だと判断すれば、事業を引き継いでくれる第三者がきっと現れます!
■社長の会社は「1円」ですか?
ご自身が思う以上にその価値に目をつけている「買い手」がどこかにいるかもしれません。当社は、社長が育てたビジネスを財務、営業・マーケティング、組織面から商品・サービス開発、ブランディングなど事業開発・運営まで、幅広く経営のサポートをいたします。
「廃業」その前に、会社の価値、事業の価値を高め、事業を「磨き上げ」ましょう! そして「今売る」から「適切なタイミングで売る」ことで社長の思いを実現しようではありませんか!
執筆:大谷将良(株式会社ブループリント)
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